• 2025年5月5日

目に優しいコンタクトレンズとは?

このような話を聞かれた40代から60代の方は多数おられるかもしれません。

私も40代ですが、10代の頃にHCLを初めて作成するときに言われたような記憶があります。

確かに2000年以前のSCLは酸素透過性がHCLより悪く、そういった理由から『SCLよりHCLの方が目に優しい』と言われていたようです。

コンタクトレンズの酸素透過性はDk値という数値で表されます。コンタクトレンズ素材がどれだけ酸素を通すかを表す指標であり、値が高いほど、目(角膜)に酸素が届きやすくなります。

簡単ではありますが、コンタクトレンズの歴史を見ていきましょう。まずは1950年頃にHCLが初めて登場します。PMMAという素材で作られましたが、なんとDk値は0で全く酸素を透過しない素材でしたので長時間の装用は不可能でした。ところが1970年ごろになるとRGPという素材でHCLが作成されるようになり、Dk値は一気に100以上に上昇します。現在のHCLもRGP素材で作成され、Dk値は150-160程度のものが多いようです。

一方、HCLに少し遅れて1970年頃にSCLは登場します。水分を多く含むハイドロゲル素材でHCLより装用感が柔らかく、初心者にも適していましたが、Dk値はMaxで80程度でした。2000年頃に新たな素材が登場するまでの間、コンタクトレンズを初めて作られた方はその当時のHCLとSCLのDk値の差によって『SCLよりHCLの方が目に優しい』といわれたのではないかと思われます。

しかしながらその後SCLの素材は進化します。2000年頃よりシリコーンハイドロゲル素材のSCLが登場し、Dk値が大幅に向上しました(Dk値86〜175)。これにより、終日装用や連続装用にも対応できるようになりました。

現在は、数字上ではHCLとSCLの酸素透過性に大きな違いがなくなりましたので、『目に優しい』という観点からはどちらを選択しても良いのではないかと思います。装用感やメンテナンス性、コスト面を考慮してどちらにするか決めていただければと思いますが、最近長期HCL装用による眼瞼下垂の症例が増えておりますのでご注意ください。

コンタクトレンズは視力矯正の手段として多くの方に使用されていますが、高度管理医療機器であり、用法を守らないと色々なトラブルが生じてしまいます。皆様、正しい使い方を守っていただくようお願いいたします。

(大変申し訳ありませんが、当院では新規患者様のコンタクトレンズ処⽅は⾏っておりません)

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